(福井県の民話より)
昔、織田信長は、
一向一揆の討伐のために、
大軍を北陸へと進めました。
そして何千という家来を永平寺にさしむけ
寺の明け渡しを命じました。
禅師が出て来て、
「仏の道を求めて修業する者に戦は無縁。
どうぞおりきとりを」と、
深々と頭を下げました。
しかし信長の家来は、それを聞き入れません。
しかたなく禅師は、
修業僧を退出する時間に
半日の猶予を貰って修業僧に告げました。
「・・・と、いうわけだから、
すぐに寺を出る用意をするように」
しかし修業僧たちは
「我々は死を恐れません。
仏のおそばにつかえる者として寺を
守りぬきます!」
そして山門の外では、
とても不思議な事がおこっていました。
旅支度をした僧が長い長い列を作り
山を下っているのです。
その列は夕方になっても続きます。
家来たちは、僧の数の多さに驚き、
合掌したままの姿勢で進み続ける
彼らの気高い姿に心を深く打たれました。
そして
力で仏に仕える者を追い出し、
その寺を占拠しようとした自分たちが、
とてもあさましく思って
包囲をといて引きあげて行きました。
永平寺を戦禍にまきこまないようにと、
山門楼上に安置されている五白羅漢が
修業僧に身を変えて、
寺を守ってくれたといわれています。
…
※五百羅漢とは
本来は仏陀(釈迦)の弟子で、
悟りを開いた500人の聖者を指す言葉。
日本では多くの場合、
500体の羅漢像を安置したお堂や寺院、
または羅漢の石像群そのものを意味する。